品種ごとのバラの香りと特徴
バラは姿・形とともに、その特有の香りも古くから人々に愛され続けています。
香水や化粧品など私たちの身近なものにも使われているバラの香り。
今回は、バラの香りの種類や成分、そして匂い方をお伝えします。
バラ園やお家のバラの香りをもっと楽しみたい方のご参考になれば幸いです。
バラの香りの種類
バラの香りは、ワイルドローズから交配・交雑されたことにより様々な種類が誕生しました。
ワイルドローズ、オールドローズ、モダンローズ、イングリッシュローズのそれぞれの香りの特徴をご紹介します。
ワイルドローズ
1つ1つは微かな香りですが、たくさん咲かせることによって拡散する香りがあります。
- ノイバラ(Rosa multiflora) 朝から昼にかけてスパイシーな甘い芳香を漂わせる
- ハマナス(Rosa rugosa) 甘く華やかな香り
- コウシンバラ(Rosa chinensis) フレッシュな草を切った時のような香りにほのかな甘さが感じられる
- ロサ・ギガンテア(Rosa gigantea) 紅茶のような香り
- ロサ・モスカータ(Rosa moschata)「ムスクローズ」とも呼ばれ、スパイシーな甘い香り
- ロサ・フェニキア(Rosa phoenicia) 華やかな甘さの中にレモン様の香り
オールドローズ
ダマスク香など濃厚な香りが特徴です。
- アルバ系(A) 濃厚で芳醇な甘い香りにすっきりとしたさわやかな香り
- ケンティフォリア系(C) ダマスク香が強く、香りに重厚感がある
- チャイナ系(Ch) フレッシュな草を切った時のような香りにほのかな甘さが感じられる
- ダマスク系(D) 「ダマスク香」と呼ばれる、強い甘さの中にラズベリー、ピーチ様のフルーティな香り
- ガリカ系(G) 華やかでコクのある強い香り
- モス系(M) ケンティフォリア系と同じくダマスク香が強く、香りに重厚感がある
モダンローズ
パフューマリー・ケミスト(香りの科学者)の蓬田勝之さんによって、7つのタイプに分類されています。
- ダマスク・クラシック 「バラらしい」香りの代表で、華やかで強い甘さをもつ
- ダマスク・モダン 情熱的でダマスク・クラシックよりも濃厚な甘さをもつ
- ティー 紅茶の香りの特徴を感じる上品で優雅な印象の香り
- フルーティ フルーツの特徴をもった、さわやかで若々しい印象の香り
- ブルー 青から赤紫の花色を持ったバラの、女性らしい芳醇な甘さをもつ香り
- スパイシー スパイスのクローブの特徴をもった、控えめで成熟した甘さをもつ香り
- ミルラ(アニス) ハーブのアニスの特徴をもった、大人っぽく落ち着いた印象の香り
イングリッシュローズ
モダンローズの中シュラブ系に分類されるイングリッシュローズですが、香り豊かな品種が多く
「ティーローズ」「ムスクローズ」「ミルラ香」「フルーツ香」「オールドローズの香り」の5つのタイプに分けられます。
また、これら5つの香りのいくつかの要素を混ぜた香りを持つ品種も多くあります。
モダンローズの香りのイメージ
モダンローズの7つの香りをわかりやすくマトリックス図で表すと次のようになります。
バラの香りの成分
バラの香りは様々な成分が含まれており、それぞれの成分の含有量によって異なった香りがします。
現在バラの香りの分析により540を超える成分が見つかっています。しかし、まだ解明されていない成分もあり、今後も新たな香りが誕生する可能性があります。
バラの香りの特徴的な主要成分は10ノート*(香調)に分けられます。
ダマスク・スウィート
「バラらしい」と感じる甘くゴージャスな香りの成分。バラの香り主要4成分とされており、よい香りとされるほとんどのバラの香りに含まれている。
フルーティ・フローラル
果物や各種の花の香りを連想させるエステル、アルコール、アルデヒド類などの成分。
主要4成分にこれらの成分がバランス良く加わることで、モモやリンゴなどの果物を彷彿させる香りが生み出されています。
ティー・バイオレット
紅茶やスミレの香りに特徴的で拡散性がある成分など。
ティー・フェノリック
やや湿った薬品的な香りで、スパイシーさを伴ったティーローズ特有の成分。他の成分と絶妙なバランスにより、高品質な紅茶のような香りが生み出される。
スパイシー
クローブ(丁子)やカーネーションにも多く含まれる成分。スパイスのような甘さが感じられる。
ミルラ(アニス)
八角やハーブのアニス(ウイキョウ)に似た、ほろ苦い甘さと青臭さを伴った成分。イングリッシュローズの一部の特徴的な香り。
ハーバル・グリーン
針葉樹の葉や柑橘の皮などに含まれる成分。
フレッシュ・グリーン
フレッシュな草を切ったときや、揉んだときのような香り成分。
ウッディー・ハニー
木のような粉っぽい蜜のようなにおいを想起させる成分。
ロージー・ワックス
油脂やワックスのような微かな匂い。バラの香りのやわらかさや保留性に関係している。
バラの香りを楽しむ
バラの香りを最大限に楽しむには、いくつかのポイントがあります。同じバラでも条件によって香りの感じ方が変わってしまうことがあります。このポイントをおさえたベストな状態の香りを楽しんでください。
生花の香り
香水やキャンドルなどでもバラの香りを感じられますが、やはり生花の香りを楽しむことをお勧めします。
また、ドライフラワーなど乾かしたバラは生花と全く違う香りになります。
切り花よりも植栽されているものを
切り花でも生花の香りを感じられますが、水に挿すことで香りが薄まり水っぽくなってしまいます。
春バラよりも秋バラ
バラのシーズンは春ですが、香りは秋がお勧めです。
秋は気温・湿度が低く大気が澄んでくるので、繊細な香りもしっかり感じられます。
早朝の涼しい時間帯に!
バラの香りは1日の中でも変化しています。一番香り高い時間帯は早朝の涼しい時間です。
バラは太陽に当たると3時間ほどで新鮮な香りが揮発してしまいます。
正しい香りの匂い方
バラの香りは花びらの表面から香り立っています。以下のようにして匂うと香りが良くわかります。
- 花びらにゆっくりと顔を近づけてすーっと静かに香りを匂う。くんくん嗅ぐと他の匂いが混ざる。
- 少し息を止めて香りのイメージを思いめぐらせる。
- 顔を花からそらして鼻から香りを出す。このとき、花に息をかけないように注意する。
- ???を3回ほど繰り返す。
おわりに
バラの香りには様々な種類があり、いくつかの香りが混ざり合って品種ごとの香りを生み出しています。
また、同じバラでも環境などによって香りが変わることがあります。
是非お気に入りの香りを探して、ベストな状態の香りを感じてみてください。
農学部出身で、鳥取でイングリッシュガーデンのあるイギリススタイルフラワーアレンジメント教室のオープンに向けて勉強中。2019年に花農家として、夫婦で新規就農しました!育児と花仕事の両立を目指す二児のママです。
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